草原シンポジウムの質問票回答(1)森林塾青水 西村さん

Q.ニホンジカによる野の花の食害は問題になっていませんか?もしあれば何か対策を取っておられますか?

A.現在のところニホンジカの被害はありませんが近隣のゴルフ場に出没しているとのうわさもありますので油断はできません。

Q.ほどよい関係の「ほどよい」とはBestじゃなく Better?

A.昔は、地域では生活のために茅を使う必要があり、逆に茅を使うことで茅場が荒れたり森林化したりせず、茅場として維持されていました。生活のためという強固なつながりによって、持続的に恵みを享受できる仕組みができていたのです。ところが今では、生活スタイルの変化などによってその強固な仕組みは成立しなくなってきました。かといってボランティアで「自然のため」という目的だけで管理するのも、なかなか長続きしないのではないかと思います。そんな中で草原を維持するために重要なのは、地域の人、都市の人を含めて様々な人が関わって、茅を使って文化財を守ったり、花や景色を楽しんだりといった色々な利用をしながら、その恵みの分を管理の力やお金に変えていくことなのではないかと思います。「ほどよい」はbestかbetterか、という意味ではなくて、昔の「生活のため」のように一つの関係だけで草原を守れるほど強固な関係でなくてもいいから、草原の様々な価値を通じて多くの人が「ほどよく」関わることで、管理を続けられる仕組みを作っていきたい、ということです。

Q.茅ボッチって…何…!?なるほど…

A.茅刈りの時に、刈った茅は一抱え分くらいにまとめて束を作ります。この束を5つ集めて円錐状に立てたものを「茅ボッチ」と言います。生えている状態の茅は水分を含んでいるので、乾燥させるために茅ボッチにして1か月程度立てておくのです。

Q.束ねた状態とそのままの状態で市場価値はどれくらい違うの?

A.きれいに束ねた茅束は現在試作中であり、生産の見通しがつけば価格交渉にはいるつもりです。

Q.ゆるい関係いい感じです!雪がある草?が焼けるほど乾いているの?

A.除雪して1週間ほどススキを乾かしてからの野焼きとなります。あまり高い炎は上がりませんが、問題なく燃えるくらいは乾きます。

Q.3月の日照時間は?

A.気象庁の「藤原」でのデータを見ると、3月の日照時間の平年値は102.9時間となっています。

Q.傾斜はどれくらい?

A.地形図から読み取ると、草原部分は約11度、その上の森林部分は約26度です。

Q.諏訪神社は長野の分社?

A.確実な史料はありませんが、藤原の諏訪神社も各地の諏訪神社と同様、諏訪大社を勧請(御分霊を戴くこと)して創建された神社であると考えられます。(要するに「分社」ということです)

Q.草原から得られる茅などの「資源」を事業として利用していくには、産業としても大きい建設業界との協働が有効のように思うが、何か今までアプローチをされたことなどはないか?

A.茅は、関東一円の重要文化財等の修復を行う建設業者が買い取ってくれるシステムになっています。

Q.ススキ群落や茅場ではカヤネズミの生息が確認されていますか?確認されている場合、カヤネズミに対する調査は行われていますか?

A.2012年に上ノ原を中心に藤原地区全域を対象として哺乳類層の調査が行われており29種類が確認されていますが、カヤネズミは記録されませんでした。また、近年私たちが活動している中では、目撃情報等もありません。ぜひ、見つけたいと思ってはいるのですが…

Q.2000年に森林塾青水が発足した経緯をもっと知りたいです。どのような経緯で誰が立ち上げたのか?…など

A.初代塾長の清水さんが(財)サンワみどり基金に勤めていた時に、すでに「飲水思源」を標榜して活動を行っており、1996年にサンワみどり基金設立25周年記念事業として、旧水上町の湯の小屋で「水源の森」分収育林事業を開始しました。その水源の森をフィールドとして、清水さんを中心に木工家仲間等が集まって立木や森林の観察会・ワークショップなどを実施する中で、森林塾青水が誕生しました。「水源の森」での活動が続く一方で、旧水上町からも町の遊休地を有効活用してくれないかという打診があり、いくつかの候補地を回ってみて、人工林ではなく落葉広葉樹の森があり、利根川にそそぐ沢があったことから上ノ原を選びました。上の原が草原を含む入会地だったので、2002年に20名ほどで現代版「入会慣行」を考える集いを始め、入会の勉強を行いました。2003年にみなかみ町から上ノ原を借用する契約を締結すると、本格的に現地の調査を行い、飲水思源や現代版の入会を念頭に管理のグランドデザインを定め、その年から茅刈りを再開、翌年には40年ぶりに野焼きを復活させました。

Q.残雪期に野焼き「雪間を焼く」をするのに防火帯つくりは必要なのか?

A.防火帯は2重の安全装置として整備していてその理由は下記のとおりです。
【1】雪間を焼く方法は日程設定や除雪経費がかさむことなど問題がありますので将来は防火帯方式に移行することを考えています。
【2】当面は雪間焼を続けざるを得ませんが、その年の積雪状況により雪間焼ができない場合があります。現に2016年は少雪で雪間焼でなく防火帯方式で実施しました。
【3】野焼きが終わり草が生えそろうまでの間や秋の枯葉のシーズンの失火による山火事の恐れがあるのでそのための防火帯でもあります。
【4】上ノ原の防火帯は7月~8月に行い、刈った草は防火帯の外に持ち出さず腐らせますので枯草のシーズンでも草丈の短い防火帯となっています。
また、成長の旺盛な時季に刈ると地下茎に栄養を蓄えられないので、繰り返せば周りのススキ草原と違う草丈の低い草地となります。防火帯としての機能に加えて、異なる植生からなるモザイク構造を作ることで、生物多様性に貢献すると考えています。

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