公開セミナー「歴史の古い草原と世界の環境政策」が開催されます

環境研究推進費課題「歴史が生み出す二次的自然のホットスポット」が中心となって、こちらのセミナーを公開で行います。
ご関心ある方はぜひご参加ください。

目次

公開セミナー「歴史の古い草原と世界の環境政策」

セミナー日時 2025年1月15日(水)18:00~19:45
オンライン会議室 Zoom

課題メンバー以外で参加してくださる方は、こちらの連絡先フォームにご記入をお願いします。

スケジュール

18:00 セミナーの趣旨

大沼あゆみ(慶應大学)
田中 健太(筑波大学山岳科学センター)

18:10~18:25
「歴史の古い草原は保全重要度が高く消失速度が速い:日本全国スケール解析」

五十里 翔吾(琉球大学、株 シンクネイチャー)

歴史の古い草原(old-growth grassland)は生物多様性ホットスポットとして近年世界的に注目されているが、その分布や減少速度は未解明の部分が多い。1850年頃・1900年頃・1950年頃の国土地理院5万分の1地形図に基づく全国土地利用データベース(氷見山 2011)と各種の植生図・土地利用図・衛星画像をもとに、1850年から継続している歴史の古い草原の分布を全国1kmメッシュ(図2)で明らかにすることに成功した。1850~1900年に、全国の草原の消失率は90%以上だった。現在までに残っている草原メッシュのほとんどは植生タイプの移行を経験しており、1850年から継続している古い草原の消失率は99%以上だった。草原メッシュにおける草原性の維管束植物の種数は、草原の継続期間が長いほど多く、歴史の古い草原が生物多様性ホットスポットであることがを全国規模で検証できた。各メッシュの保全優先度を植生間で比較すると、森林よりも草原が高く、草原の中でも歴史の古い草原で抜きんでて高く、海洋島など世界遺産地域にも匹敵していた。歴史の古い草原が消失する場合はほとんどで、人工林または二次林に変化しており、植林または管理放棄により森林化が、歴史の古い草原の消失原因であることが確かめられた。

18:25~19:05
「公的な土地利用政策が世界の草原における生物多様性を向上させた」
(原題 Public land-use policies have improved biodiversity on the world’s grasslands)

本間樹良来 ほか(ボン大学ほか)

草地の生物多様性の損失のほとんどは、管理の強度に直接起因している。多くの国々では、草地の利用をより持続可能なものにするべく農業環境政策を実施してきた。例えば、土地利用に関する規制政策や、より持続可能な管理を行う土地所有者に対する直接支払いなどである。しかし、これらの政策が実際に世界の草地の生物多様性を改善したかどうか、また、改善した場合はどのような条件下で改善したのかについて、大規模な証拠はほとんどない。そこで本研究では、さまざまな農業環境政策の影響を世界規模で定量化する。それぞれ20年近くにわたる、地上観察に基づく広範な鳥類データと衛星に基づく土地被覆および草原状態のデータを活用し、因果関係を推論するための2つの補完的な計量経済学的手法を組み合わせた。その結果、平均的には、多くの政策が世界の草原に大きな影響を与えていないことが分かったが、注目すべき例外は土地利用規制であり、これは特に制度が整った豊かな国々において特に効果的だった。例えば、生態系サービスへの支払いなどは、世界的に見ると草原にそれほど影響を与えていないと推定された。さらに、環境保護と食糧生産の間には短期的なトレードオフがあることも確認された。各土地利用政策は管理強度を3%減少させ、これは草原1km2あたりのタンパク質生産量が約2%減少したことに相当する。この管理強度の低下によって、鳥類の一般種の種数を1~2種増加させた(レッドリスト掲載絶滅危惧種に限っても増加率は小さいものの依然として有意だった)。

19:05~19:30
質疑応答・総合討論

関連情報

歴史の古い草原の生物多様性や環境価値については、第72回日本生態学会(札幌)でもシンポジウムを行います。

2025.3.16 9~12時 中ホールB
「S03 歴史の古い草原に隠された環境価値(Part2)」

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